社員とのコミュニケーションや人材育成を目的に、1on1を取り入れる企業が増えています。しかし、「面談で出た意見を、その後の育成や組織改善に活かせていない」と感じることもあるのではないでしょうか。
リクルートマネジメントソリューションズの調査では、1on1導入企業の60.1%が「上司と部下のコミュニケーションの機会が増えた」、46.5%が「部下コンディションの把握ができている」と回答しています。一方で、1on1は実施するだけで人材育成や定着につながるとは限りません。
大切なのは、1on1で見えてきた課題や希望を整理し、その後の育成や職場環境の改善につなげることです。本記事では、課題を「個人」と「組織」の視点から整理し、人材育成や組織改善、人材定着につなげる方法を解説します。
課題に合わせて育成方法を考える
1on1で出てきた内容は、すべて同じ方法で対応するのではなく、まず「個人への支援」と「組織として検討すること」に分けて考えてみましょう。
| 1on1で見えてきたこと | 考えられる課題 | 対応例 |
|---|---|---|
| 特定の業務に時間がかかっている | スキル・経験 | OJT、研修、業務フォロー |
| 新しい仕事に挑戦したい | キャリア・成長 | 業務経験や役割の検討 |
| 一部の社員に仕事が集中している | 業務体制 | 業務分担・人員配置の確認 |
| 教える人によって内容が違う | 教育体制 | マニュアル・教育方法の整理 |
| 誰に相談すればよいか分からない | 組織体制 | 相談先・役割の明確化 |
| 複数の社員が同じ業務で困っている | 業務プロセス | 業務フローの見直し |
例えば、一人の社員だけが特定の業務に苦戦している場合は、経験やスキルに合わせた個別支援が必要かもしれません。
一方、複数の社員から「この業務が分かりにくい」という声が出ているのであれば、本人の能力だけではなく、マニュアルや教育方法、業務フローなどに原因がある可能性も考えられます。
「誰が困っているのか」だけではなく、「なぜ起きているのか」まで整理することが、その後の適切な対応につながります。
個人の課題を人材育成につなげる
1on1で個人の課題が見つかった場合、「研修を受けてもらう」「上司が教える」とすぐに対応方法を決めるのではなく、まず課題の原因を整理することが大切です。
課題に合わせて育成方法を考える
例えば、「資料作成が苦手」という課題が見つかったとします。
同じ「資料作成が苦手」でも、
- PowerPointの操作が分からない
- 情報を整理することが苦手
- 相手に伝える構成を考えることが苦手
- 作成経験そのものが少ない
など、原因によって必要な支援は異なります。
操作方法が課題なら、研修やマニュアルが役立つかもしれません。一方、経験不足であれば、実際に資料を作る機会を増やし、上司や先輩からフィードバックを受ける方が適している場合もあります。
「できないこと」だけを見るのではなく、なぜできないのかを整理し、課題に合わせて必要な経験や支援を考えることが人材育成につながります。
育成後の変化を確認する
支援を実施した後は、その後の変化も確認しましょう。
課題を把握 → 支援方法を決める → 実践する → 変化を確認する
という流れです。
「研修を受けてもらったから完了」ではなく、実際の仕事で活かせているか、以前できなかったことができるようになったかを確認します。
変化が見られない場合には、本人の努力不足と判断するのではなく、支援方法が合っていたのか、別の原因がないかを改めて考えることも必要です。
複数の1on1から組織課題を見つける
1on1の情報を活用するうえで重要なのが、一人ひとりの話を個別に見るだけでなく、複数の社員に共通する傾向を見ることです。
例えば、複数の社員から、
Aさん:「問い合わせ対応に時間がかかる」
Bさん:「確認する人によって回答が違う」
Cさん:「対応方法が分からないことがある」
という声が出たとします。
それぞれ別の悩みに見えますが、整理してみると「問い合わせ対応のルールが明確になっていない」という共通の原因があるかもしれません。
この場合、それぞれの社員に個別で指導するだけでは、根本的な改善にはなりません。対応方法を整理したり、判断基準を統一したりするなど、組織側の改善が必要になります。
「個人の問題」と決めつけない
社員から課題が挙がったときに注意したいのが、「本人の能力や考え方の問題」とすぐに判断してしまうことです。
同じような課題が複数人から出ているのであれば、
- 業務の進め方
- 教育体制
- 人員配置
- 情報共有
- マネジメント
- 評価やキャリア
など、会社側に改善できる部分がないか確認してみましょう。
1on1で集まった声を横断的に見ることで、通常の業務報告や数値だけでは見つけにくい組織課題に気づくきっかけになります。
見つかった組織課題を改善につなげる
組織課題が見つかった場合、1on1を担当した上司だけですべて解決する必要はありません。
課題によって、対応すべき人や部署は異なります。
人事・管理職・関係部署と連携する
例えば、
- 業務の進め方 → 現場の管理職
- 教育体制 → 人事・教育担当
- 人員配置 → 人事・経営層
- 部署間の連携 → 関係部署
というように、課題に応じて相談する相手を考えます。
その際は、1on1で見つかった課題を、
- 何が起きているのか
- 誰・どの範囲で起きているのか
- どのくらい発生しているのか
- 原因として何が考えられるのか
- 誰と改善を検討するのか
という形で整理しておくと、組織として検討しやすくなります。
ただし、社員が1on1で話した内容をそのまま共有することには注意が必要です。本人のプライバシーや相談内容に配慮し、必要に応じて「複数の社員から○○という声が出ている」など、個人を特定しない形で組織課題として整理しましょう。
改善後の変化を確認する
改善策を実施したら、それで終了ではありません。
例えば、「教育方法が担当者によって違う」という課題に対してマニュアルを作成しても、
マニュアルを作った=改善した
とは限りません。
実際に社員が利用しているか、教える内容が統一されたか、以前困っていた社員が仕事を進めやすくなったかまで確認します。
課題発見 → 改善策を実施 → 変化を確認 → 必要に応じて再改善
というサイクルをつくることで、1on1を組織改善につなげることができます。
1on1を人材定着・離職防止につなげるために
1on1を実施すれば、必ず社員の離職を防げるわけではありません。
しかし、普段の業務では表面化しにくい社員の変化や課題を把握し、会社として改善できる部分に対応することは、人材定着を考えるうえで重要です。
例えば、「業務量が多い」という声が継続的に出ているにもかかわらず何も対応されなければ、社員が「相談しても変わらない」と感じる可能性があります。
一方、すぐに解決できない課題であっても、
「現在このような対応を検討している」
「○月までに一度状況を確認する」
など、その後の対応を伝えることはできます。
社員から出た意見をすべて実現することが目的ではありません。意見を把握し、必要な課題を整理したうえで、対応できること・できないことも含めてフィードバックすることが大切です。
こうした積み重ねによって、1on1を社員の声を聞くだけの場ではなく、人材育成や職場環境の改善、人材定着を考える機会として活用できます。
まとめ
1on1を人材育成や人材定着につなげるには、面談で得た情報をその後の改善に活かすことが重要です。
社員の課題を「個人への支援」と「組織として改善する課題」に整理し、それぞれに合った対応を検討しましょう。
課題を把握する → 整理する → 改善する → 変化を確認するという流れを継続することで、1on1を人材育成や組織改善、人材定着につなげることができます。
Gozaru部では、人材育成や人材定着をはじめ、採用や業務改善など、企業が抱えるさまざまな課題に合わせたサービスをご提案しています。
「社員から課題は聞けているものの、どこから改善すればよいか分からない」「人材に関する課題を整理したい」といったお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
参考:
リクルートマネジメントソリューションズ「職場におけるフィードバック実態調査」https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000001450/
リクルートマネジメントソリューションズ「1on1ミーティングに関する実態調査」https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000001055/
パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/1on1/

















