「専門知識を持った人を採用したいが、なかなか応募が集まらない」
「WebやDXを進めたいが、社内に詳しい人がいない」
このような場合、求人媒体を増やしたり採用条件を見直したりするだけでなく、「その仕事は正社員として採用する必要があるのか」という視点で考えてみることも一つの方法です。
社内に不足している専門知識を補う方法として、外部人材や副業・兼業人材を活用する企業もあります。
本記事では、専門人材を採用できない企業に向けて、副業人材を活用するメリットや向いている業務、導入方法、注意点を紹介します。
副業人材とは?
副業人材とは、本業を持ちながら、別の企業や組織でも自身の経験やスキルを生かして働く人材です。企業側から見ると、正社員として採用する以外にも、必要な知識や経験を持った人材に業務へ参加してもらう方法の一つになります。
ただし、副業人材の働き方や契約形態は一つではありません。業務委託としてプロジェクトに参加してもらうケースもあれば、雇用契約を結んで働いてもらうケースもあります。
そのため、副業人材を活用するときは、「副業人材を採用すること」自体を目的にするのではなく、自社のどの課題を解決するために、どのような人材が必要なのかを先に整理することが重要です。
企業が副業人材を活用するメリット
副業人材は、単なる人手不足の解消だけでなく、社内にない知識や経験を取り入れる方法としても活用できます。
社内にない専門知識を取り入れられる
マーケティング、Web制作、DX、人事制度、新規事業など、専門性が必要な業務をすべて社内の人材だけで対応するのは難しい場合があります。
副業人材を活用することで、その分野ですでに経験を持つ人から知識やノウハウを取り入れることができます。
中小企業庁の2025年版小規模企業白書でも、副業・兼業人材を受け入れるメリットとして、人材不足への対応だけでなく、自社とは異なる経験や知識を得られることなどが紹介されています。
必要な業務から始めやすい
必ずしも一つの職種を丸ごと任せる必要はありません。
たとえば、
- Webサイトの改善
- SNS運用
- 広告運用
- 業務フローの見直し
- ITツールの導入
- 人事制度の設計
- 新規事業の市場調査
など、自社で不足している業務を整理し、特定のプロジェクトから依頼する方法があります。「人が足りないから採用する」だけではなく、「この課題を解決するために外部の知識を借りる」という考え方がポイントです。
外部の視点を取り入れられる
長く同じメンバーで業務を行っていると、自社では当たり前になっている方法や考え方に気づきにくくなることがあります。
異なる企業や業界で経験を積んだ人材が加わることで、社内だけでは出てこなかった改善案や考え方が見つかる可能性があります。
副業人材はどんな業務に活用できる?
副業人材の活用を検討するときは、まず「自社のどこに知識や人材が不足しているのか」を整理しましょう。
| 活用シーン | 依頼する業務の例 |
|---|---|
| マーケティング | SEO、SNS運用、広告運用、データ分析 |
| DX・業務改善 | 業務フロー整理、ITツール選定・導入 |
| Web関連 | Webサイト改善、デザイン、コンテンツ制作 |
| 新規事業 | 市場調査、事業企画、仮説検証 |
| 人事・採用 | 採用戦略、人事制度、求人改善 |
| 営業 | 営業戦略、販路開拓、営業資料の改善 |
特に、「必要性は感じているものの、社内に詳しい人がいない」という業務は、副業人材の活用を検討しやすい分野です。
中小企業でも副業人材を活用できる?
副業人材は、大企業だけの人材戦略ではありません。経済産業省や各地域の経済産業局でも、中小企業・小規模事業者による副業・兼業人材の活用事例が紹介されています。
2025年版小規模企業白書では、新潟県燕市のミノル製作所株式会社の事例が掲載されています。同社では、新商品を開発したものの販路開拓を行う人材が不足していたため、デザイナー、企画マーケター、インフルエンサーの副業・兼業人材を活用しました。
その結果、新分野への進出に必要な知識やスキルを補完するだけでなく、社内の社員が事業に主体的に関わる機会にもつながったと紹介されています。
この事例からも、副業人材は単純な「人手不足を埋める人」ではなく、社内にない専門性を取り入れて課題解決を進める人材として活用できることが分かります。
副業人材を導入するまでの流れ
副業人材を活用するときは、いきなり人を探すのではなく、まず社内の課題を整理することが重要です。
STEP1|解決したい課題を決める
最初に、
「何に困っているのか」
「社内だけではなぜ解決できないのか」
「どのような状態になれば成功なのか」
を整理します。
たとえば「マーケティング人材が欲しい」ではなく、「Webサイトからの問い合わせを増やすために、SEOや広告の改善ができる人材が必要」というところまで具体化すると、必要な人材を探しやすくなります。
STEP2|依頼する業務を切り出す
次に、副業人材へ任せる業務を明確にします。
業務内容、期間、目標、成果物、社内担当者などを整理しておくことで、企業と副業人材の認識のずれを防ぎやすくなります。
STEP3|人材を探す
必要な人物像が決まったら、副業・兼業人材のマッチングサービスなどを利用して候補者を探します。
スキルだけで判断するのではなく、自社の課題や事業について理解してもらえるか、社内担当者とコミュニケーションを取れるかなども確認しましょう。
STEP4|契約・受け入れ体制を整える
契約形態や業務範囲、報酬、情報管理、成果物の取り扱いなどを事前に確認します。
また、副業人材を雇用する場合と業務委託する場合では、企業側が確認すべき内容も異なります。
契約形態に応じたルールを確認し、不明な点については専門家へ相談しましょう。
副業人材を活用するときの注意点
副業人材を採用すれば、自動的に社内の課題が解決するわけではありません。
特に注意したいのが、次の3点です。
目的や業務範囲を曖昧にしない
「とりあえずマーケティングをお願いしたい」といった依頼では、企業側と人材側で期待する成果がずれてしまう可能性があります。
依頼する業務とゴールをできるだけ具体的にしておきましょう。
社内の担当者を決める
副業人材に業務を任せきりにするのではなく、社内側にも窓口となる担当者が必要です。
定期的に進捗や課題を共有し、必要な情報を提供できる体制を整えます。
契約形態や情報管理を確認する
副業・兼業にはさまざまな働き方があります。
雇用契約を結ぶ場合には労働時間や健康管理などについても確認が必要です。また、業務上の情報を社外の人材と共有する場合には、秘密保持や情報管理についても事前にルールを決めておきましょう。
厚生労働省では「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公開しているため、導入を検討するときは確認しておくことをおすすめします。
副業人材が向いている企業・向いていない企業
副業人材はすべての人材不足を解決できる方法ではありません。
たとえば、単純に日常業務を行う人数そのものが不足している場合には、正社員やパート・アルバイトなどを採用した方が適している場合があります。
一方、
「社内に専門知識がない」
「新しい取り組みを始めたい」
「専門人材を採用したいが採用が難しい」
「まずは特定のプロジェクトを進めたい」
といった課題であれば、副業人材を検討する価値があります。
重要なのは、最初から「正社員」「副業人材」と採用方法を決めるのではなく、自社の課題から必要な人材や関わり方を考えることです。
まとめ
人材不足だからといって、必ずしも正社員採用だけが解決策とは限りません。
社内に不足している専門知識や経験が明確であれば、副業人材など社外の人材を活用することも選択肢になります。
まずは、
「現在どの業務で困っているのか」
「人手が足りないのか、専門知識が足りないのか」
「どこまで社内で対応できるのか」
を整理してみましょう。
採用することそのものを目的にするのではなく、自社が抱えている課題を解決するには、どのような人材が必要なのかという視点から考えることで、自社に合った人材確保の方法を選びやすくなります。
参考文献
・厚生労働省「副業・兼業」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
・中小企業庁「2025年版 小規模企業白書 第1節 小規模事業者の経営力の向上」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/shokibo/b2_1_1.html
・関東経済産業局「中小企業・小規模事業者による多様な人材活用事例集」 https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/jinzai/chiikino_jinjibu/data/240329_jinzaikatsuyou_jireisyu.pdf


















