育てた社員の早すぎる離脱│“もったいない離職”を防ぐには?

多くの企業で、「採用した社員が思ったより早く辞めてしまう」「育てた若手がすぐ離職する」という課題が生じています。
こうした「もったいない離職」は、採用コストや教育投資のムダになるだけでなく、組織の活力・一貫性にもマイナスです。
では、どうすれば離職を防ぎ、定着を促せるのか――。
本稿では、最近の調査結果をもとに「離職の主な要因」と「それを防ぐための施策」を整理し、実務に活かせるヒントをお伝えします。

離職、「もったいない」と言われる背景

ある調査で、過去3年以内に入社した新人・若手社員のうち、自己都合で退職した人は約2割に及ぶことがわかりました。
しかも、離職理由の最多は「労働環境・条件の悪さ」。労働時間や休日のとりづらさなど、働き方そのものへの不満が離職を後押ししています。
また別の調査では、2023年入社の新入社員のうち、将来「3年以内に離職したい」と考えている人が24%にのぼるとの報告もあります。
このように、新卒・若手に限らず「数年以内に辞めたい」「辞める可能性が高い」と考えている層が少なくありません。
背景には、給与や待遇だけでなく、職場の「カルチャー」「コミュニケーション量」「働きやすさ」が深く関わっているようです。

つまり、採用して終わりではなく、「入社後定着させる仕組み」が不可欠――。
それが「もったいない離職」を防ぐ第一歩と言えます。

離職の主な要因――「環境」「条件」「やりがい」のギャップ

では、なぜ若手や中堅が離職を考えやすいのか。背景を整理すると、主に以下のような要素が挙げられます。

  • 働き方・労働条件の不満
    労働時間が長い、残業が常態化、休日がとりにくい――こうした環境は、生活の質やワークライフバランスに直結します。調査では「労働環境・条件が悪い」が最も多い離職理由でした。
  • 給与・待遇への納得感の欠如
    報酬や昇給の見通しが見えづらい、実績と報酬が見合っていない、評価基準に納得できない――こうした不満は、社員のモチベーションや将来設計を揺るがします。
  • 職場の人間関係・コミュニケーション不足
    上司や先輩との関係、同僚との距離感、相談や雑談の機会が少ない――こうした要素は、仕事への安心感や帰属意識に影響します。最近の調査でも、「コミュニケーション量」が定着意向に強く関係することが示されています。
  • 仕事内容と期待・価値観とのギャップ
    「思っていた仕事と違う」「自分のやりたいことができない」「仕事の意義を感じられない」――こうしたギャップは、入社直後や1年目〜数年以内で「辞めたい」と考える要因となります。実際、離職を考えた理由のトップは「仕事にやりがいや意義を感じない」でした。

これらの要因は単独ではなく、複合的に社員の「離職したい気持ち」を高める傾向があります。

“もったいない離職”を防ぐために――有効な施策とは?

では、何をすれば離職を抑えられるのか。最近紹介されている効果的な施策には、以下のようなものがあります。

  1. 働きやすい環境と柔軟な就業制度の整備
    残業削減、休日取得の見直し、勤務時間の見直し、フレックスタイムやリモート対応──こうした“働きやすさ”の改善は、労働条件への不満を減らし、社員の定着に直結します。
  2. 評価・報酬制度の見直しと透明化
    公正な評価基準の設定、成果に応じた報酬の見直し、昇給やキャリアパスの明示――これにより社員は自身の将来を見通しやすくなり、離職を考えづらくなります。
  3. コミュニケーションの仕組み化(1on1・面談・雑談の場づくり)
    上司・先輩との雑談、業務上の相談だけでなく、“将来のキャリア”“働き方の不満”などを気軽に話せる場を設けることで、社員の不安や不満を早期にキャッチできます。これが安心感となり、定着につながります。
  4. 入社後のフォローと育成支援、キャリアの見える化
    入社1年目〜3年目は離職のリスクが高い時期。仕事の難しさやギャップによって離職を考える人も少なくありません。
    このため、定期的なフォロー面談、成長実感を得られる育成プログラム、キャリアパスの提示などを通じて、「この会社で成長できる」「将来が見える」という安心感を与えることが重要です。
  5. 組織文化の整備と「人財を資本と捉える」マインドの浸透
    社員をただの「労働力」として扱うのではなく、成長・活躍を前提とした「資本=人財」と捉える姿勢が重要です。教育や研修、働きやすさへの投資を惜しまないことで、社員のモチベーションや定着意識が高まります。

実践する際のポイント ――「万能解」ではなく、複合的アプローチを

離職防止に効果的な施策は複数ありますが、どれか一つだけ、というのでは不十分です。たとえば、待遇改善だけで人間関係や働きやすさに問題があれば、離職リスクは残ります。
大切なのは、「働きやすさ」「評価・待遇」「コミュニケーション」「育成」「企業文化」といった複数の要素をバランスよく整えること。そして、定期的に社員の声を聴き、改善を続けることです。
特に若手が入社後1〜3年で離職しやすい現状を踏まえると、この「複合的な仕組みづくり」は急務です。
また、離職を“想定外”ではなく、“防ぐべき事象”と捉えることで、採用や教育にかけるコストを無駄にせず、むしろ「投資」として回収できる土台が整います。

まとめ

“もったいない離職”――。それは、企業にとって人的コスト、教育コスト、時間、そして組織としての将来構想をも失う大きな機会損失です。

一方で、以下のように取り組むことで、その多くは防ぐことができます。
・働きやすさ、柔軟性のある労働条件の整備
・公正で透明性の高い評価、報酬制度
・定期的なコミュニケーションとフォロー体制
・入社後の育成、キャリア支援
・社員を「人財」と捉える企業文化の醸成

こうした取り組みを通じて、「採用して終わり」「教育して終わり」ではなく、「採用 → 定着 → 成長 → 貢献」を実現する組織をつくることが可能です。

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鬼頭 亨輔
人材会社で採用支援に携わっています。人材不足に悩む企業をサポートしながら、アグリゲーションサイトの特徴やオウンドメディアの活用法など、日々学びを深めています。このブログでは、採用現場での気づきや最新情報をわかりやすく発信していきます。ぜひ気軽にご覧ください!