制度だけでは防げない、職場のトラブルとその向き合い方

最近、職場で「ちょっと言いにくい困りごと」が増えてきたと感じることはありませんか?
退職代行を使う若手社員、理由を言わずに突然休職する社員、子育て中の社員とそうでない社員との間に生まれるモヤモヤした空気。どれも大きな問題ではないように見えて、実は職場の信頼や働きやすさに影響を与えています。
本記事では、職場の中で静かに起きている「すれ違い」や「本音」に目を向け、企業としてどう向き合えばよいのかを考えていきます。

「退職代行サービス」とは?

近年は、退職の意思を自ら会社に伝えるのではなく、退職代行サービスを利用して退職する若手社員も増加しており、ニュースやSNSで取り上げられる機会も目立っています。

そこで今回は、退職代行サービスの概要や、企業としてどのような対処ができるのかを見ていきましょう。

退職代行サービス

<退職代行とは?>
「退職代行サービス」とは、従業員本人に代わって退職の意思を勤務先に伝えるサービスです。

<退職代行の認知度>
年代別の認知度を見ると、若年層ほど認知度が高く、利用経験は20~30代が大多数を占めています。

過去に自分で利用したことがある 3.7%
自分は利用したことはないが、職場に利用した人がいる 12.9%
自分、職場に利用した人はいないが、内容は知っている 33.3%
内容は分からないが、名前は聞いたことがある 31.6%
知らない、分からない 18.6%

<退職の際は退職代行サービスを使わずに、本人が勤務先に退職の意向を伝えるべきか?>
世代別に「退職の際は退職代行サービスを使わずに、本人が勤務先に退職の意向を伝えるべきか」を問うと、退職代行を利用する若年層ほど「本人が告げることが良い」と感じていことが分かります。
ここからも「退職代行を使わざるを得ない事情がある」ことが垣間見えます。

<なぜ退職代行が人気に?退職理由は?>
「退職代行サービス」は、一般的には労働上で何らかの問題がある会社に対して利用されることが多くあります。

  • パワハラ
  • モラハラ
  • 契約と勤務実態の違い


など多くの原因は上記の3つです。
上記は、対策され改善が進んでいる企業も多いのではないでしょうか?

そんな中、最近増えてきた理由が以下です。

  • 会社と従業員とのすれ違い
  • 会社心情:頑張って教育し、コミュニケーションを取っている
  • 従業員心情:距離を置いてほしい

どんな理由であれ「退職代行」から連絡が来る前の対策が急務となります。

<「退職代行」を使われた際に企業がすべきこと>

  • 代行業者の身元確認 インターネット等で代行業者を検索、一度電話を切り再度調べた電話番号へ折り返す
  • 従業員本人の依頼有無を確認 委任状・契約書・運転免許証・社員証で確認
  • 従業員の雇用形態を確認 従業員の雇用形態も改めて確認するようにしたい
        法律 無期雇用 「退職を申し出た日から2週間後に契約終了」
          有期契約  契約内容による。有期契約の場合は依頼を受けない代行業者もある
  • 退職届の提出依頼 会社既定のフォーマットがある
      署名捺印が必要などの場合は郵送での手続きとなるため、退職届を郵送する
  • 退職届の受領 退職届を受領した後は、社内での退職手続きが完了したタイミングで、従業員本人に伝える
    その場合はメールでも良いが、できれば書面でも郵送し、証拠が確実に残るようにする
  • 貸出品の返却依頼 仕事用のPCやスマートフォン、健康保険証、制服など
  • 各種書類の送付 離職票、雇用保険被保険者証、年金手帳、源泉徴収票など

<引継ぎはお願いできるか?>
法律的には、引継ぎしなくても退職できます。しかし会社側としては、業務を円滑に進めるためにもできれば引継ぎをしてほしいところです。
実は退職代行業者もトラブル回避のために引継ぎを推奨しています。

<「退職代行」を使われないために企業がすべきこと>
・従業員と円満な関係を築く
・「退職代行」が使われる原因があるか確認する
・「退職代行」を使われた場合のその原因を考える

【従業員のメンタルヘルスケアのためのビタミンモデルって?】

社員のメンタル不調が増える中で、「制度は整えたはずなのに、なぜ改善されないのか」と悩む企業も少なくありません。ストレスチェックや相談窓口だけではカバーしきれない“働き方のストレス”が、日々の職場環境に潜んでいるのです。
そこで注目されているのが、「ビタミンモデル」という考え方です。これは、働く人の心の健康と職場環境の関係を、栄養バランスにたとえて整理したもの。メンタルケアを“仕組み”として見直すヒントとして、多くの企業が参考にし始めています。

<ビタミンモデルとは?>

「ビタミンモデル」とは、英国の心理学者ピーター・ウォール氏が1987年に唱えた労働ストレス理論です。
職場における九つの環境特性が、労働者のメンタルヘルスと深く関わりがあることを説いています。
名称の由来は、九つの環境特性を栄養の「ビタミン」になぞらえて説明されています。
ビタミンは、欠乏すると身体に悪影響を及ぼしたり、必要レベルを超過すると健康増進に寄与しなくなったりします。環境特性も欠乏したり、過剰になったりすることで、メンタルヘルスに影響を及ぼすことを示唆しています。

過剰障がいあり(適度が重要、過剰は負荷になる)

コントロールの機会  職務における裁量や意思決定への参加は健康に良いが、過剰になると負担やストレスになる。
技能使用の機会保有する技能の発揮、新たな技能習得の機会が健康にいい影響を与える
明確な目標明確な要求・目標・役割が活動の基盤となり、その達成に集中できる
職務の多様性様々な場所での職務、多様なタスクが関心を惹起する
明確な評価活動に対する明確な評価が、結果の把握・予測、リスク回避に奏功する
対人接触の機会友情、社会的支援、協働等が円滑な業務に寄与する

過剰障がいなし(不足は問題、過剰でも害は少ない)

金銭の入手可能性金銭的窮乏が生活を圧迫し個人を束縛する
身体的安全物質的・物理的な脅威から保護されることで精神の健康は向上する
高い社会的地位高い社会的地位に就くことで、自尊心を高く維持できる

脂溶性ビタミン(ビタミンAやD)のようなに、環境特性も過剰だと悪影響を及ぼすものと、水溶性ビタミン(ビタミンCやE)のように過剰でも一定の効果を保つものがあります。
カロリソスカ医科大学ストレス 研究所のロバート・カラセクによる研究(ジョブデマンドーコントロールモデル)によると、最良の自由度が高く、心理的要求が高い場合、能動的に考えることができ、新しい行動様式を開発するための学習意欲が高まると報告されました。
企業は、従業員のメンタルヘルス改善のためにビタミンモデルを指標として、九つの環境特性の適正レベルを見直してみてはいかがでしょうか

【「なぜ私が子持ち様の仕事をさせられないといけ ないの?」不満の原因と解決策を考える】

多くのメディアで、不満の声が聞こえてくる「子持ち様」論争。 なぜこのような声が大きくなってきたのか・・・ 子持ちだから当たり前!と考える人が多くなったのでしょうか? フォローする側の不満の原因と解決策を考えてみます。

<時代に合っていない社会体制>

「急な欠勤や早退で迷惑をかけるなら、子育てが落ち着くまで働くべきでない」という考えは極端です。しかし、現実には人員に余裕のない職場では、理由の如何に関わらず突然の欠勤は業務に大きな影響を与えます。

  • 昭和
     人員的な余裕を持っておおらかな組織運営
     夫は仕事、妻は育児分業体制
  • 令和
     人員的な余裕なし、ギリギリな組織運営
     共働きが一般化(約7割以上)

昭和は「いずれは自分も助けてもらう立場になる」という意識がありました。しかし令和では、結婚・出産率の低下や共働きの増加により、「お互い様」の文化が成り立ちにくくなっています。

フォローをする側の不満>

  • 休暇取得の難しさ
    自分も休みたいときに休みにくい。
  • 業務量の増加と報酬の不十分さ
    フォローによる業務増加分の手当や調整がない。
  • 私的予定の調整負担
    業務増加により、自分の予定を変更せざるを得ない場合がある。

<誰もが働きやすい環境づくり>

  • 会社の役割
    フォローしてくれた社員をきちんと評価・称賛する姿勢を持つ。
  • フォローする側の心構え
    「いつか自分も助けてもらうかもしれない」という気持ちを持つ。
  • フォローを受ける側の心構え
    感謝の気持ちを伝え、休暇を子育てに充てられることを共有する。

このような相互理解のある雰囲気があれば、子育て中社員も安心して働け、フォローする側の不満も軽減されます。

<まとめ>

退職代行、メンタル不調、「子持ち様」問題──いずれも表面化した時にはすでに職場内で信頼関係が損なわれていることが多く、制度だけで解決できる問題ではありません。

だからこそ、企業に求められるのは、従業員の“気持ちの揺らぎ”に目を向けることです。

退職代行を使われる前に何ができたのか。メンタル不調になる前に何かサインはなかったのか。「子持ち様」と揶揄される職場構造に偏りはなかったか。小さな違和感を見逃さず、声なき声に耳を傾ける姿勢が、社員の安心と組織の信頼を育てます。

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鬼頭 亨輔
人材会社で採用支援に携わっています。人材不足に悩む企業をサポートしながら、アグリゲーションサイトの特徴やオウンドメディアの活用法など、日々学びを深めています。このブログでは、採用現場での気づきや最新情報をわかりやすく発信していきます。ぜひ気軽にご覧ください!