企業の「パーパス」が就職活動に与える影響とは?Z世代が求める存在意義を解説

現代の企業経営において、利益追求だけでなく、企業の「パーパス(存在意義)」が重要視されています。特に、これからの企業を担うZ世代の就職活動では、このパーパスが企業選びに大きな影響を与えています。

株式会社学情の2022年11月29日発表の調査結果(2024年3月卒業予定の大学生・大学院生370名対象)では、パーパスを制定する企業に対するZ世代の印象や、企業選びで意識していることが明らかになりました。

本記事では、この調査結果に基づき、企業のパーパスが現代の採用活動にどう影響し、採用戦略にどう組み込むべきかを、人事・採用担当者や経営者の皆様に解説します。

パーパスとは?企業の存在意義を再定義する重要性

「パーパス(purpose)」とは、企業としての「存在意義」を指します。近年では、単なる目標や理念を超え、「何のために自社は存在するのか、社会にどのような価値を提供していくのか」という、企業の根源的な問いに対する答えとして使われています。

この図は、企業が「なぜ存在するのか」から「どうやって実現するか」までを一貫して整理するためのフレームワークを表しています。
上に行くほど抽象度が高く、下に行くほど具体的な行動や方法になります。

最上段(Why:なぜ社会に存在するか)
パーパス(Purpose)
企業が社会に存在する根本的な理由や意義を表します。
図中では「経営理念」に近いとされています。

2段目(Where:どこを目指すか)
ビジョン(Vision)
将来的に企業がどのような状態を目指すのか、方向性を示します。

3段目(What:何を行うべきか)
ミッション(Mission)
目指すべき目的を達成するために、具体的に何を行うのかを定義します。

最下段(How:どのように実現するか)
戦略・バリュー(Strategy・Value)
目標を実現するための具体的な方法や、社員が共有する価値観を示します。

企業理念
「ミッション・ビジョン・バリュー」とほぼ同義で使われることが多いです。

従来、経営理念やビジョン、ミッションが用いられてきましたが、パーパスは企業の事業活動の根本的な理由であり、社会貢献への哲学的な問いに対する答えです。例えば、「最高の製品提供」というミッションがあっても、それが「社会のインフラを支え、人々の生活を豊かにする」という目的に繋がるなら、それがパーパスになり得ます。

パーパスは一度策定したら大きく変わらない、企業のDNAのようなものです。これを明確にすることで、企業は社会における役割を認識し、従業員は自身の業務が社会にどう貢献しているかを理解できます。これは、従業員のエンゲージメント向上だけでなく、採用活動においても大きな武器となります。

特に今日のビジネス環境では、社会課題への対応やESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが強く求められます。パーパスは単なるスローガンではなく、具体的な行動指針として機能し、企業の信頼性とブランド力を強化します。明確なパーパスは、社会貢献や倫理観を重視する若い世代からの共感を得る上で不可欠です。

Z世代がパーパスを制定する企業に抱く「好感」の理由

学情の調査結果によると、パーパスを制定している企業に対し、Z世代の学生は非常に好意的な印象を持っています。

好感が持てる:39.7%
どちらかといえば好感が持てる:33.0%
どちらともいえない:23.0%
どちらかといえば好感が持てない:1.6%
好感が持てない:2.7%

この結果から、合計で7割以上(72.7%)の学生がパーパスを制定している企業に好感を抱いていることがわかります。

Z世代は情報過多な社会で育ち、社会問題への意識が高いのが特徴です。彼らは給与や福利厚生だけでなく、企業が社会にどのような価値を提供し、どのような未来を目指すのかに強い関心があります。これは「ただ単にお金を稼ぎたいわけではない」という価値観の表れです。彼らにとって仕事は、自己実現や社会貢献の手段でもあります。

企業が掲げるパーパスから、Z世代は社会への責任やビジョンを読み取ろうとします。環境問題への取り組みや地域社会への貢献、多様性の尊重といった具体的な行動に繋がるパーパスは、彼らに魅力的に映ります。彼らは企業の言葉だけでなく、行動とその背景にある理念を重視する傾向があります。

また、パーパスは企業の「誠実さ」や「信頼性」を示す指標にもなります。明確なパーパスを持つ企業は、社会に責任を持ち、持続可能な発展を目指すメッセージを発信でき、信頼性の高い企業として認識されます。

さらに、パーパスは従業員の「意味」や「モチベーション」を醸成する上で欠かせません。パーパスに共感することで、従業員は自身の仕事が社会に貢献している実感を得られ、エンゲージメントが高まります。社会にポジティブな影響を与えることを重視するZ世代にとって、パーパスが明確な企業は魅力的な就職先となるのです。

「パーパス」が志望度を上げる!学生が企業に求める共感の力

パーパスは企業への好感度だけでなく、学生の「志望度」にも直結していることが学情の調査で明らかになっています。

志望度が上がる:26.5%
どちらかといえば志望度が上がる:35.4%
どちらともいえない:27.3%
どちらかといえば志望度は上がらない:5.9%
志望度は上がらない:4.9%

この結果から、6割以上(61.9%)の学生がパーパスを知ることで志望度が上がると回答しており、パーパスが採用における重要な要素であることが明確に示されています。

フリーコメントからは、学生たちがパーパスに何を求めているのか、具体的な声が聞こえてきます。
「ただ単にお金を稼ぎたいわけではない」
「パーパスを通して、企業が事業を展開する目的を知りたい」
「企業が目指す方向性と、自身の関心が一致していると志望度が上がる」

Z世代の学生は、金銭的報酬以上に「社会貢献」や「意味のある仕事」を重視しています。企業のパーパスが自分の価値観や関心と一致すると、志望度が大きく高まる傾向にあります。

そのため、企業が「なぜこの事業を行うのか」「社会にどう貢献したいのか」を明確にすることは、学生が働く「意義」を理解するうえで重要です。パーパスが明確であれば、学生は入社後の自分の役割を具体的に描きやすくなり、ミスマッチの防止にもつながります。

自身の「パーパス」を意識するZ世代と企業の接点

学生が企業のパーパスに強い関心を持つ一方で、彼ら自身もまた、自身の「パーパス」や、解決したい社会課題を意識していることが調査で示されています。

意識する:18.4%
どちらかと言えば意識する:26.2%
どちらともいえない:31.4%
どちらかといえば意識しない:15.9%
意識しない:8.1%

合計で約45%の学生が自身のパーパスや解決したい社会課題を意識していることがわかります。この数字は、企業のパーパスが学生に響く理由をさらに裏付けていると言えるでしょう。学生たちは、自身の「存在意義」や「社会に貢献したい」という思いを抱えながら就職活動に臨んでいます。

人事・採用担当者や経営者の皆様にとって、この事実は非常に重要です。つまり、採用活動においては、単に企業の魅力を一方的に伝えるだけでなく、学生一人ひとりが持つ「パーパス」や「社会課題への意識」に寄り添い、それらを理解しようとする姿勢が求められているのです。

面接や採用イベントでは、学生の価値観や関心のある社会課題について問いかけることが効果的です。たとえば、「社会に出て最も解決したいことは?」「やりがいを感じる瞬間は?」といった質問で、学生の内面にあるパーパスを引き出せます。

そのうえで、企業のパーパスが学生の想いとどう重なるのか、自社の事業がどのような社会課題の解決に貢献しているのかを具体的に伝えることが重要です。従業員の取り組み事例などを交えて説明すれば、学生にも働くイメージが湧きやすくなります。

また、パーパスが社内で実際にどう浸透しているかを示すことも大切です。理念だけでなく、日々の業務に落とし込まれていることを伝えることで、企業の誠実さが伝わり、学生の安心感にもつながります。

このように、学生が自身のパーパスを意識しているからこそ、企業は自社のパーパスを明確にし、それを採用プロセス全体で効果的に伝えることで、より良い人材との出会いを創出できるのです。

まとめ

今回の学情の調査結果から、Z世代の学生の6割以上が、パーパスを制定している企業に対し好感を持ち、さらに6割以上がパーパスを知ることで志望度が上がるということが明らかになりました。企業選びをする上で「社会における企業の在り方」を重視する就活生が多い今、自社のパーパスの策定や、就活生が考えるパーパスの理解を進めることが、採用成功の鍵を握ると言えるでしょう。

貴社のパーパスを明確にし、それを採用活動全体に浸透させる「パーパス採用」は、単に優秀な人材を獲得するだけでなく、企業文化の醸成や従業員エンゲージメントの向上にも大きく寄与します。パーパスに共感する人材は、企業への愛着も深く、困難な状況でも貢献意欲を失わない傾向があります。

Z世代と共に持続可能な未来を築くためにも、今こそ貴社のパーパスを見つめ直し、採用戦略の核に据えてみてはいかがでしょうか。貴社の存在意義を明確にすることで、共感を呼ぶ採用活動を実現し、未来を担うZ世代の心をつかむことができるはずです。

出典:
https://www.hrpro.co.jp/trend_news.php?news_no=2085
https://www.dodadsj.com/content/220131_purppse/

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鬼頭 亨輔
人材会社で採用支援に携わっています。人材不足に悩む企業をサポートしながら、アグリゲーションサイトの特徴やオウンドメディアの活用法など、日々学びを深めています。このブログでは、採用現場での気づきや最新情報をわかりやすく発信していきます。ぜひ気軽にご覧ください!